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睡眠障害

はじめに

睡眠障害のサインや症状は大きく分けて、

1)不眠、

2)日中の過剰な眠気、

3)睡眠中に起こる異常行動や異常知覚・異常運動、

4)睡眠・覚醒リズムの問題、の4つにまとめられます。

また、いびきや寝ぼけなど、周囲の人から指摘される症状もあります。

サインや症状を、自分で困っているものと人から指摘されるものの両面から把握し、疑われる疾患について専門医にきちんと判断してもらいましょう。

自覚できる症状

不眠(寝つきの悪さ、途中で起きてしまい再入眠できない、朝早く起きてしまう、熟睡できない)

→ 精神疾患や身体疾患、服用薬、下記の睡眠障害をチェック

  そのうえで不眠症かどうか判断

過眠(日中眠くてしかたない、居眠りをして注意をされる)

→ 睡眠不足や睡眠の質が低下する病気がないか、チェック

  もし、夜十分眠っているのに日中眠い場合は、過眠症を調べる

就寝時の異常感覚(脚がむずむずしたり火照ったり、脚をじっとさせていられないためによく眠れない、夕方以降に悪化)

→ むずむず脚症候群を調べる

睡眠・覚醒リズムの問題(適切な時刻に入眠できず、希望する時刻に起床することができない)

→ 睡眠日誌で睡眠・覚醒リズムをチェック

  概日リズム睡眠障害を調べる

人から指摘される症状

いびき・無呼吸(いびき、眠っているときに息が止まる、突然息が詰まったようにいびきが途切れる)

→ 体重、飲酒、服用薬をチェック

  睡眠時無呼吸症候群を調べる

睡眠中の異常行動(寝ぼけ行動、寝言、睡眠中の大声・叫び声)

→ 夢との関連性、起こして覚醒するかどうか、チェック

  睡眠時随伴症を調べる

睡眠中の異常運動(寝入りばなや夜間に、脚がピクピクと動いている)

→ 就床時の異常感覚についてチェック

  周期性四肢運動障害を調べる

睡眠衛生について

症状の把握とともに、睡眠衛生についてもチェックしましょう。よくない睡眠環境や誤った睡眠習慣が、睡眠を妨げているかもしれません。

寝室環境(騒音、日当たり、寝るときの明るさ、テレビやラジオ)

睡眠習慣(床に入る時刻、床から出る時刻、実際に眠りに入る時刻、実際に起きる時刻、寝るときに習慣的にすること、昼寝)

嗜好品(飲酒、喫煙、コーヒーなどのカフェイン類)

不眠症以外の疾患に対する治療法

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)は、眠っている間に呼吸が止まる病気です。
Sleep Apnea Syndromeの頭文字をとって、「SAS(サス)」とも言われます。
医学的には、10秒以上の気流停止(気道の空気の流れが止まった状態)を無呼吸とし、無呼吸が一晩(7時間の睡眠中)に30回以上、若しくは1時間あたり5回以上あれば、睡眠時無呼吸です。

睡眠中に呼吸が止まってしまう原因は大きく分けて2つあります。
1つ目は、空気の通り道である上気道が物理的に狭くなり、呼吸が止まってしまう閉塞性睡眠時無呼吸タイプ(OSA)。
2つ目は、呼吸中枢の異常による中枢性睡眠時無呼吸タイプ(CSA)です。

上気道のスペースが狭くなる要因としては、首・喉まわりの脂肪沈着や扁桃肥大のほか、舌根(舌の付け根)、口蓋垂(のどちんこ)、軟口蓋(口腔上壁後方の軟らかい部分)などによる喉・上気道の狭窄が挙げられます。

重症度によって治療法が異なります。経鼻的持続陽圧呼吸療法(鼻CPAP療法)や口腔内装置などが使われます。肥満がある場合は、ダイエットが必要です。飲酒や睡眠薬は、かえって悪化させます。

むずむず脚症候群・周期性四肢運動障害

次のような症状があると、むずむず脚症候群と診断されます。

➀ 症状が夕方から夜にひどくなる

むずむず感のために寝つきが悪く(入眠困難)、熟睡もできなくて(熟眠障害)、夜中によく目が覚めて、その後眠れなくなってしまいます(途中覚醒)。

このように不眠症のさまざまな症状をきたしますが、真夜中から早朝にかけては、異常感覚が軽くなったり消えたりするようです。

② 睡眠中に落ち着きなく脚を動かす

脚が不快で、動かしたり、床にこすりつけたり、冷やしたりすることで楽になるので、睡眠中は無意識に脚を動かし続けています。

③ 異常感覚のために、脚を動かしたい欲求が強い

ふくらはぎや足の甲、足の裏などに痛みや不快さを感じます。

異常感覚は、安静にしているとひどくなり、脚を動かすと軽くなる

睡眠中以外にも異常感覚は襲ってきます。横になったり座っていたりすると不快な感じが起こるので、脚を動かすことでその感覚を消しています。

 

こうした症状が週に3回以上生じ、3か月以上続いていて本人や周囲が苦痛や障害と感じている場合、さらには他の病気や薬物などによって症状が起こっているのではない場合に、むずむず脚症候群と診断されます。

むずむず脚症候群の原因はまだ特定されていないようですが、脳内の神経伝達物質「ドーパミン」がうまく造られなくて不足してしまうからではないかと考えられています。

抗てんかん薬(レグナイト:一般名ガバペンチンエナカルビル)や抗パーキンソン病薬(ニュープロパッチ:一般名ロチゴチン。ドパミンアゴニスト)などが使われます。

眠っているあいだに足がリズミカルに動いてしまう病気に「周期性四肢運動」がありますが、むずむず脚症候群の患者の6~8割の人に、この病気との合併症があるとされています。

また、貧血や腎不全、心不全、関節リューマチ、パーキンソン病の人は、むずむず脚症候群になりやすいことがわかっています。

ある病気が別の病気によって起こることを「続発性」と呼びますが、続発性むずむず脚症候群の原因疾患として、鉄欠乏症貧血、葉酸欠乏、糖尿病、慢性腎不全、パーキンソン病、関節リューマチ、下肢静脈瘤、がん、高コレステロール血症などが挙げられています。

また、むずむず脚症候群になりやすい「危険因子」や「誘因」として、高齢や妊娠、アルコールやカフェイン、抗精神病薬などがあります。

さらに放置しておくと、日常生活に大きな影響を及ぼして昼間の疲労感をひき起こしたり、回復が長引いて全身の慢性疼痛が出てくることもあるようです。

そして症状が悪化して、睡眠障害と過度のストレスから「うつ病」を招いたり、最悪、自殺に至る危険性も指摘されています。

過眠症

夜間十分な睡眠をとり、規則的な生活を心がけるようにしましょう。昼休みなどに短時間の昼寝をうまく取り入れましょう。眠気に対して中枢神経刺激薬が使用されることがありますが、専門医による診察と検査が必要です。

 

睡眠時随伴症

ストレスなどが関与している場合があるので、ストレスの軽減につとめましょう。睡眠中の寝ぼけ行動に対しては、危険に配慮した寝室環境を整えましょう。薬物療法として、睡眠薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、抗パーキンソン病薬などが使われます。

 

概日リズム睡眠障害

体内時計をリセットし、通常の一日のリズムに合わせるためには、朝たっぷり光を浴びるようにしましょう。休日でも同じ時刻に起床して、光を浴びるのがコツです。睡眠薬やサプリメントを使用する場合は、専門医の指導を仰ぎましょう。

 

睡眠薬の治療

寝つきが悪い、途中で起きてしまう、早くに目が覚めてしまう、などの不眠症状に応じて、睡眠薬が使用されます。また、抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬なども使用されることがあります。

お薬による不眠症治療は、 「バルビツール酸系睡眠薬」にはじまり、これまでは「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」、「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬」などがよく使われてきました。これらはいずれもGABA受容体作動薬に分類されるお薬です。その後、「メラトニン受容体作動薬」という体内時計を介して眠りをもたらす薬が開発されました。そしてさらに最近、オレキシンという覚醒にかかわる脳内物質の働きを抑えることによって睡眠に導く「オレキシン受容体拮抗薬」も開発され、「不眠の薬物治療」の選択肢が広がっています。

GABA受容体作動薬(GABAの働きを強める薬)

脳の活動を抑えて眠りに導く

脳の興奮を抑えるGABA(ガンマアミノ酪酸)という神経伝達物質の働きを促すことによって、脳の活動を休ませて眠りへと導きます。

お薬の構造から「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」と「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬」に分けられ、不眠症の症状や患者さんの生活状況などの背景に応じて使い分けられています。

 

メラトニン(睡眠ホルモン)

メラトニンは、体内時計の調節に関係し、睡眠と覚醒のリズムを調節する働きがあるホルモンの一つです 。メラトニン受容体作動薬は、脳内のメラトニン受容体に作用し、体内時計を介することによって、睡眠と覚醒のリズムを整え、睡眠を促します。

 

オレキシン受容体拮抗薬(オレキシンの働きを弱める薬)

「オレキシン」は、起きている状態を保ち、安定化させる(覚醒を維持する)脳内の物質です。オレキシン受容体拮抗薬は、その「オレキシン」の働きを弱めることによって眠りを促す、新しいタイプのお薬です。脳の覚醒に関わるシステムを抑制することによって、脳の状態が覚醒から睡眠に切り替わることを助け、自然な眠りへと導きます。

 

作用時間別の薬剤

超短時間作用型

 トリアゾラム (商品名ハルシオンなど、ベンゾジアゼピン系

 ゾピクロン  (商品名アモバン、シクロピロロン系

 酒石酸ゾルピデム  ( 商品名マイスリー、イミダゾピリジン系

 エスゾピクロン  (商品名ルネスタ、シクロピロロン系)

短時間作用型

 エチゾラム (商品名:デパス、エチカームなど。チエノジアゼピン系)

 ブロチゾラム (商品名:レンドルミンなど。チエノジアゼピン系

 ロルメタゼパム (商品名:エバミール、ロラメット。ベンゾジアゼピン系)

 ブロムワレリル尿素 (商品名:ブロバリン。有機臭素化合物)

短-中時間作用型

 ペントバルビタール (商品名:ラボナ、ネンブタールなど。バルビツール酸系)

 塩酸リルマザホン (商品名:リスミーなど)

中時間作用型

 フルニトラゼパム (商品名:サイレース、ロヒプノールなど。ベンゾジアゼピン系

 ニトラゼパム (商品名:ベンザリン、ネルボンなど。ベンゾジアゼピン系

 ニメタゼパム (商品名:エリミン。ベンゾジアゼピン系

 エスタゾラム (商品名:ユーロジンなど。ベンゾジアゼピン系

 アモバルビタール (商品名:イソミタール。バルビツール酸系)

 抱水クロラール (商品名:エスクレ。抱水クロラール系)

長時間作用型

 フルラゼパム (商品名:ダルメート、ベノジールなど。ベンゾジアゼピン系

 フェノバルビタール (商品名:フェノバール。バルビツール酸系)

 ハロキサゾラム (商品名:ソメリン。ベンゾジアゼピン系

 クアゼパム (商品名:ドラール。ベンゾジアゼピン系

その他

 ベゲタミンA/B (塩酸クロルプロマジン、塩酸プロメタジン、フェノバルビタール混合薬)

 ラメルテオン (商品名:ロゼレム。メラトニン受容体作動薬

 スボレキサント (商品名:ベルソムラ。オレキシン受容体拮抗薬

 

睡眠習慣の見直し

➀ 睡眠時間にこだわらない

  年をとると必要な睡眠時間は短くなります。あまり長時間眠ることを目標とせず、年齢に合った睡眠時間を設定しましょう。

② 眠くなってから床につく、就床時刻にこだわりすぎない

  眠ろうと意気込むと、かえって頭が冴えてきます。寝つけないままに床の中にいると、眠れないことへの不安や焦りが  生じ、ますます眠れなくなってしまいます。

③ 同じ時刻に毎日起床

  何時間眠れたかにかかわらず、毎日同じ時刻に起床しましょう。

④ 眠る以外の目的で床の中で過ごさない

  床の中でテレビを見たり、読書をしたりしないようにしましょう。なかなか眠れなかったら、いったん床から離れ、自分なりのリラックスできることを行ってみましょう。

➄ 昼寝は短めに、遅くとも15時前に

  長い昼寝や夕方以降の昼寝は、夜の睡眠に悪影響を及ぼします。

参考文献

 

厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_sleep.html

むずむず脚症候群 https://www.mag2.com/p/news/238741

快眠ジャパン http://www.kaimin-japan.jp/medical-treatment/sleeping-pills/

無呼吸なくそう https://659naoso.com/

外科丸
​GEKAMARU
外科丸らは、主に下部の消化器外科を専門領域としています。
そして、「健康的であり、誠実に接し、満足感ある医療を提供する。」ことをモット―として日々働いています。
​​群馬県伊勢崎市にて
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