
私塾 外科丸学校
Private School Gekamaru Gakko

身体症状症
概念
身体症状症(身体表現性障害)とは
消化器症状や痛み、しびれ、うずき・・などさまざまな身体症状に悩んだり、重篤な病気に罹っているのではないかと悩んだりして、生活が妨げられるものを言います。ICD10の分類(WHOのガイドライン)では
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身体化障害(症状が多発的で繰り返し起こり、しばしば変化するもの)
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心気障害(重篤で進行性の身体の病気にかかっているのではととらわれるもの)
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身体表現性自律神経機能不全(自律神経系の器官の症状)
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持続性身体表現性疼痛障害(頑固で苦しい痛み)
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他の身体症状症(身体表現性障害)
などが含まれます。最近のDSM-5(アメリカ精神医学会の診断基準)では、「身体症状症および関連症群」という名称に、心気障害は「病気不安症」という名称になっています。
身体症状症は患者さんの自覚症状に見合う身体的異常や検査結果がないにもかかわらず、痛みや吐き気、しびれなど多くの身体的な症状が長い期間にわたって続く病気です。患者さんの中には、体に力が入らくなったり、けいれん発作のような症状が出現したりすることもあります。症状は体のさまざまな場所に生じ、しばしば変化します。患者さんの中には、症状を身体的に説明する原因がないということが受け入れられず、医療機関を転々としてしまい、精神科受診に至るまでかなりの時間がかかってしまう方もいらっしゃいます。また、多くの患者さんは、そうした身体症状のために仕事、学校や家庭などにおける日常生活に支障が出ています。
近年のアメリカを中心とする精神科診断の分類の整理や、日本語病名の検討委員会の話し合いから、新しい分類や呼称が使われるようになりました。以前はこの章で扱われる病気は「身体表現性障害」と分類されていましたが、重複があったり境界があいまいだったりしたことから、新しい呼び名では「身体症状症および関連症候群」と呼ぶことになりました。以下では、新しい名称を使いながら、一部、古い名称をも併記しながら説明します。
症状
代表的な身体症状症
「身体症状症および関連症群」に分類される病気にもいくつかの種類があります。そのうち代表的なものを以下に示します。
身体症状症
痛みや胃腸症状などのさまざまな身体症状が続くが、適切な診察、検査を行っても身体的な病気や薬による影響としては十分に説明できない、という病状です。痛みが主なものを、従来は疼痛性障害と呼んでいました。
病気不安症
重い病気である、病気にかかりそうだという気持ちが非常に強くなる病状です。身体の病気は存在しないか、あるいは存在したとしてもごく軽度で、気持ちの状態と実際の身体的な状態とに大きなギャップが生じます。従来は心気症と呼ばれていました。
変換性/転換性障害(機能性神経症状症)
力が入らない(脱力・麻痺)、筋肉の強い突っ張り、歩けない、などといった運動に関する症状や、皮膚の感覚がおかしい、見えない(一部しか見えない)、聞こえない(聞こえにくい)、といった感覚の症状が出ます。他にも全身の筋肉がけいれんするてんかん発作のような症状が出現したり、意識を失ったかのような症状を生じたりすることもあります。あるいは、声が出ない、のどの中に何かの塊があるという感覚(ヒステリー球、と呼ばれます)もしばしばみられる症状です。