
私塾 外科丸学校
Private School Gekamaru Gakko

ピロリ菌
H. pylori検査の適応疾患
H.pyloriの検査は保険適用となっていますが、適応疾患は胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purupura;ITP)、早期胃がんの内視鏡治療後胃、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎です。
なお、これらの検査はH.pylori除菌治療前と除菌治療後では実施できる検査に若干の相違があります
1.除菌前
①迅速ウレアーゼ試験、
②鏡検法、
③培養法、
④尿素呼気試験、
⑤抗体測定(血中・尿中)、
⑥便中抗原検査
のうち1項目のみ、または初回実施に限り①と②、④と⑤、④と⑥、⑤と⑥の組み合わせから1つを実施することが可能です。
2.除菌後
除菌前と同様に、保険適用となっているのは①~⑥のうちの1項目です。ただし、初回実施に限り④、⑤、⑥のうちの2つの検査を同時に実施することができます。
H. pylori検査の利点・欠点
以下に①~⑥の検査法の概要と、利点・欠点を点診断、面診断に分けて解説します。
1.点診断
侵襲的検査である内視鏡で採取(生検)した胃の切片で検査を行うため、採取した部分にH.pyloriが存在していないと偽陰性になることがある点に注意を要します。
➀迅速ウレアーゼ試験 :
内視鏡で採取した胃の組織を尿素+フェノールレッドの入った容器(黄色)に入れ、H.pyloriがいる場合、ウレアーゼによりアンモニア(NH4)と重炭酸イオン(HCO3ー)が発生して色調が黄色から赤へ変化します。短時間での判定が可能なため、推奨される検査法です。
➁鏡検法:
胃の切片を顕微鏡で組織学的に調べる検査です。胃の病変の組織学的な評価が可能です。
③培養法:
胃の切片に存在するH.pyloriを培養して確認する方法です。H.pyloriが確認されれば除菌治療の際の抗生物質への感受性の有無を調べるのにも役立ちます。
2.面診断
除面診断は内視鏡を用いない非侵襲的検査です。検体として呼気や血液・尿を用いるため、点診断のようなH.pylori不在部位で検査をしてしまうといった弱点はありません。
④尿素呼気試験:
まず空腹時に呼気を採取します。すぐ後に検査用の錠剤1錠を噛んだりせずに水100 mLと一緒に服用します。その後、左側臥位の姿勢を5分間保ち、次に座位で20分間安静にし、再度呼気を採取して判定します。この検査法は簡便、高精度で、小児にも実施でき、感染診断のみならず除菌判定にも有用です。
➄抗体測定(血中・尿中):
イムノクロマト法で血中・尿中の抗H.pylori抗体を調べる検査です。この検査法は菌量が少ない場合にも有用です。抗体測定の中でも迅速尿中抗体測定は、原理はほぼ同じですが、20分で判定が可能という利点があります。ただ、いずれの測定法も除菌判定には不適です。
⑥便中抗原:
便を採取してH.pylori抗原を調べる検査です。感度、特異度は高く、小児でも実施可能な点は利点ですが、検体の採取・取り扱いが煩雑な点が難点です。

一般的な商品とその特徴
ランサップ
アモキシシリン(抗菌薬)、クラリスロマイシン(抗菌薬)、ランソプラゾール(PPI)を1シート(1日服用分)にまとめた製剤
ランサップ400と800の違いに関して
規格の違いはクラリスロマイシンの1日服用量の違い・400:クラリスロマイシンが400mg/日・800:クラリスロマイシンが800mg/日
ランピオン
アモキシシリン(抗菌薬)、メトロニダゾール(抗菌薬)、ランソプラゾール(PPI)を1シート(1日服用分)にまとめた製剤
主にピロリ菌の2次除菌療法で使われる
ラベキュア
アモキシシリン(抗菌薬)、クラリスロマイシン(抗菌薬)、ラベプラゾール(PPI)を1シート(1日服用分)にまとめた製剤
ラベキュアパック400と800の違いに関して
規格の違いはクラリスロマイシンの1日服用量の違い・400:クラリスロマイシンが400mg/日・800:クラリスロマイシンが800mg/日
ラベファイン
アモキシシリン(抗菌薬)、メトロニダゾール(抗菌薬)、ラベプラゾール(PPI)を1シート(1日服用分)にまとめた製剤
主にピロリ菌の2次除菌療法で使われる
ボノサップ
アモキシシリン(抗菌薬)、クラリスロマイシン(抗菌薬)、ボノプラザン(PPI)を1シート(1日服用分)にまとめた製剤
ボノサップパック400と800の違いに関して
規格の違いはクラリスロマイシンの1日服用量の違い・400:クラリスロマイシンが400mg/日・800:クラリスロマイシンが800mg/日
ボノピオン
アモキシシリン(抗菌薬)、メトロニダゾール(抗菌薬)、ボノプラザン(PPI)を1シート(1日服用分)にまとめた製剤
主にピロリ菌の2次除菌療法で使われる
主な副作用や注意点
消化器症状
下痢(30%に生じる) 、吐き気、食欲不振などがあらわれる場合があり、味覚の変化を感じるなどの症状があらわれる可能性もある
皮膚症状
発疹、痒みなどがあらわれる場合がある
肝機能障害
頻度は非常に稀とされるが、AST、ALT、γ-GTPなどの上昇などを伴う肝機能障害があらわれる場合がある
倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸、発疹、吐き気、痒みなどがみられ、症状が続く場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
他の薬剤との飲み合わせに関して
本剤に使われるPPIやクラリスロマイシンなどは他の薬剤との相互作用に特に注意が必要
PPIとの相互作用に特に注意が必要な薬剤例・アタザナビル、リルピビリン、ジゴキシン、イトラコナゾールなど
クラリスロマイシンとの相互作用に特に注意が必要な薬剤例・アスナプレビル、バニプレビル、タダラフィル、スボレキサント、エルゴタミン製剤など
上記以外にも注意すべき薬剤があり事前に確認するなど適切に対処する
メトロニダゾールを含む製剤(ランピオン、ラベファイン、ボノピオン)と妊婦や授乳婦等に関して
メトロニダゾールは胎児に対する安全性は確立していない
治療上必要と判断される場合を除き、特に妊娠3ヶ月以内は投与を避ける(経口投与により胎盤関門を通過し、胎児へ移行することが報告されている)
授乳中の婦人が使用する場合は、授乳を中止する(母乳中へ移行する場合がある)
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/58ca340967f669a0138b456a.html




