
私塾 外科丸学校
Private School Gekamaru Gakko

めまい
めまいの原因となる疾患
● 耳疾患(耳性めまい)
● 視力異常(眼性めまい)
● 頚部筋緊張異常(頚性めまい)
● 過度の血圧下降(降圧)
● うつ状態
● 小脳・脳幹疾患
● 大脳疾患
多くの場合、めまいの持続時間やめまいにともなう他の症状によっておおよその診断ができます。
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1分以内におさまる回転性めまいで、難聴や耳鳴りがない
良性発作性頭位めまい症(耳が原因のめまいの約50%) -
1分以上続くめまい(回転性、ふらつき)で、難聴や耳鳴りがなく風邪を引いた後などにおこる
前庭神経炎(バランスを伝える神経の神経炎)(耳が原因のめまいの約15%) -
1分以上続く回転性めまいで、難聴や耳鳴りをともなう
メニエール病(耳が原因のめまいの約10%) -
1分以上続くめまい(ふらつき、目の前が暗くなる、立ちくらみなど)で、手足のしびれ、後頭部痛、ものが二重にみえ、ことば が喋りづらい、などの症状(脳の異常を示す)をともなう
脳の病気にともなうめまい(循環障害、脳卒中、など)
高齢者はめまいを起こしやすくなります。理由は次のようなものがあげられます。
①平衡感覚のおとろえ…高齢者では内耳や前庭神経、前庭神経核、大脳皮質などの神経系が老化によって変性していきます。そのために平衡感覚の情報をうまく処理できず、めまいを起こしやすくなります。
②血圧を調節する能力のおとろえ…年をとると血圧を調節する能力がおとろえ、血圧の変動が激しくなります。その結果、脳幹や視床、大脳皮質に酸素や栄養が十分に送られなくなり、めまいを起こしやすくなります。
③いろいろな病気…高齢者になると高血圧、糖尿病、あるいは動脈硬化症などさまざまな病気が起こってきます。このため薬を服用するので病気や薬の副作用によるめまいも頻発してきます。
高齢者のめまいは、原因を簡単にあきらかにできないことが特徴です。たとえば若い人であればめまいに伴って難聴や耳鳴りが生じれば、耳に原因があるとわかります。ところが、高齢者ではもともと耳鳴りがあったり、以前から難聴であることが少なくありません。こういう状況のもとでめまいが起こったとしても、必ずしも耳に原因があるとはいえないのです。
めまいの感じかたも必ずしも典型的ではありません。回転性のめまいが起こるような病気であっても、揺れるようなめまいとして感じることがあります。このように、診断がむずかしいのが高齢者のめまいです。
[原因]
高齢者のめまいを起こす原因にはいくつもありますが、特に多いのが、
①起立性低血圧(低血圧症)、
②椎骨脳底動脈循環不全、
③脳梗塞・脳出血、
④脱水
の4つです。なかでも起立性低血圧によるめまいはもっとも多いと考えられます。
□起立性低血圧によるめまい
起立性低血圧とは、座った位置から立ち上がったときに最高血圧が20mmHg以上低下するものをいいます。若い人では急激に血圧が下がると顔が青ざめ、冷や汗が出て倒れてしまうことがありますが、老人では若い人と違い、反応自体が弱くあらわれます。いっぽうで、血圧がすこし下がっただけでもめまいを起こしやすくなります。
めまいを感じるのは大脳皮質の頭頂葉の第2野の周囲です。特に頭頂葉の第2野は前大脳動脈と中大脳動脈の境にあり、ここは心臓からもっとも遠いので、血圧が下がって脳の血液循環量が低下すると、まっ先に障害されます。その結果、めまいが起こります。特に高齢者では血圧を一定に保つ機能がおとろえているために、急に立ち上がると血圧が下がり、めまいになりやすくなります。
起立性低血圧の原因には、血液が脚にたまる、パーキンソン病、多発神経炎、薬剤の服用などがあります。
・血液が脚にたまる…起立性低血圧でもっとも多い原因といえましょう。本来、座った位置から立ち上がると神経の末端からノルエピネフリン(ノルアドレナリン)という物質が放出されて脚の血管を収縮させます。その結果、血液が脚にたまることを防いでいます。しかしこの反応がおとろえてくると、立ち上がったときに血液が脚のほうへ流れ、脳に流れる血液が減るために起こります。対策としては、急に立ち上がらないこと、立っていてめまいが起こりそうになったら、足踏みをします。弾性ストッキングを使用するのもよいでしょう。
・パーキンソン病…パーキンソン病では血管の収縮を調節する交感神経のはたらきが弱くなるため、立ち上がると血液が脚のほうへ流れてしまいます。その結果、脳の血液循環量が減少して、血圧の低下が起こります。この場合には血圧を上げる薬を使います。
・多発神経炎…末梢神経が障害されて手足の先からしびれが始まります。血管を支配している神経に障害が及ぶと、立ち上がったときに血管がうまく収縮しなくなります。そのため脚に血液が流れ込み、血圧が低下します。パーキンソン病はアルコール依存症、糖尿病、腎臓病などが原因で起こります。その原因となる病気を治療することが大切です。
・薬剤による起立性低血圧…薬の服用による起立性低血圧も多いものです。特に血圧降下薬、利尿薬、狭心症の治療に使うニトログリセリン、向精神薬などです。
□椎骨脳底動脈循環不全によるめまい
これは、動脈硬化が進行したり、頸椎(けいつい)の変形が起こって始まります。
□脳卒中によるめまい
脳梗塞や脳出血も高齢者に多いめまいの原因です。小さな梗塞(ラクナ梗塞)が起きてもまひは出ず、めまいでおさまってしまうことも多くあります。
□暑さによる脱水から起きるめまい
暑さのために汗をかくと、からだの水分が失われ、脱水状態になります。同時に血液の粘りけが増してきます。この結果血流がとどこおり、めまいを起こします。
特に高齢者はのどのかわきを感じる感覚がにぶくなるので、脱水が生じやすく、周囲の人はいつも注意する必要があります。脱水を防ぐためには、こまめにお茶などを飲み、入浴や就寝前にもコップに1杯の水を飲むようにします。夜間にトイレに行くのをいやがって水分補給を控えることもありますが、脱水を起こしやすく、好ましくはありません。
https://medical.jiji.com/medical/011-0081-01
高齢者
(1)良性発作性頭位めまい症
良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo:BPPV)2)はめまい疾患の中で最も多く,半規管内に粒子(デブリ)が迷入することで生じると考えられています。症状は特徴的であり,頭部回転時に生じる数秒~1分程度の回転性めまいです。寝起きや,靴ひもを結ぶ,上方にあるものを取ろうとした際,つまり前後方向に頭部を回転させたときにめまいが生じる後(前)半規管型と,寝返りなど左右方向の頭部回転で誘発される外側半規管型にわけられます。
BPPVは問診だけによって診断することもできますが,頭位眼振検査,頭位変換眼振検査を行うことでより確実に診断することができます。治療は半規管内に迷入した粒子を卵形囊に排出させることを目的とした,頭位治療が行われます。頭位治療はどの半規管に粒子が迷入したかによって異なりますので,まずは眼振検査によって病巣診断を行い,それぞれの患者に合った頭位治療を行います2)。
(2)中枢性めまい
内海ら3)は末梢性めまいが疑われて入院した急性めまい患者309例中5例(1.6%)が中枢性めまいであったと報告しています。特に高齢者では若年者に比べて中枢性めまいの比率が高く,疾患の重篤度からも中枢性めまいの鑑別が何より優先されると思います。Newman-Tokerら4)は,ベッドサイドで施行可能な3つの簡易検査であるヘッドインパルステスト(Head Impulse Test),眼振検査(Nystagmus),偏斜視検査(Test of Skew)を組み合わせることで,MRI以上の診断精度で急性めまいの中から中枢性めまいを診断できるとし,3つの検査の頭文字を取った「HINTS」によるスクリーニング法を提唱しています。
このほか,体幹失調のため立位や歩行が不可能な場合や,意識障害がある場合も中枢性めまいを疑うべきです。脳梗塞の画像診断では頭部MRI検査,特に拡散強調MRIが優れています5)。ただし,超急性期では拡散強調MRIでも偽陰性になる場合がありますので,発症当日のMRIで異常が認められなくても,適宜MRIの再検査を検討する必要があります。治療は高次施設にお願いすることになると思いますので割愛します。
(3)薬剤によるめまい・ふらつき
高齢者は若年者とは薬剤に対する感受性が異なることから,めまいの原因を考えるとき,薬剤の影響も考慮する必要があります。一番多い起立性低血圧は,降圧薬のほか,排尿障害治療薬など他の薬剤でも生じることがあるので注意が必要です。またフェニトイン,マイナー・トランキライザー,抗うつ薬による中枢神経作用,アスピリンやアミノ配糖体,シスプラチンによる内耳障害によってもめまい,ふらつきが生じえます。このため薬剤歴は必ず聴取し,原因薬剤の中止,減量を考慮します。






