
私塾 外科丸学校
Private School Gekamaru Gakko

神経伝達物質と精神病
神経伝達物質
これまで数十の神経伝達物質が特定されており、アミノ酸類(グルタミン酸、γ-アミノ酪酸、グリシンなど)、モノアミン類(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン、アセチルコリンなど)、ペプチド類(エンドルフィン、サブスタンスP、バソプレシン、ソマトスタチンなど)に大別されます。 なかでも、以下のモノアミン類は精神疾患に深く関係していることが分かっています。
セロトニン
起きているときは常にシナプスに分泌されて、覚醒状態を保っています。
精神を安定させるはたらきのある神経伝達物質です。脳内の視床下部や大脳基底核・延髄の縫線核などに多く分布しています。普段は、同じモノアミン類のドーパミン(喜び、快楽など)やノルアドレナリン(恐怖、驚きなど)の情報を適度に抑えていますが、セロトニンが低下すると攻撃的になったり、不安やうつ、パニック発作などを引き起こしたりするといわれています。
ドーパミン
喜びや快楽などを感じさせる神経伝達物質です。脳内の報酬系という神経系に深く関わっています。例えば、お酒を飲むことによって快く感じるのは、ドーパミンが放出されて報酬系が活性化するためです。何らかの物質などの依存症になるのは、それが本人にとってドーパミンを活発化させるものだからと考えられます。
また、ドーパミンは黒質線条体路、中脳辺縁系路、中脳皮質路の3つの神経経路ではたらいています。黒質線条体路はパーキンソン病と関連し、中脳辺縁系路と中脳皮質路は統合失調症と関連すると考えられています。
ノルアドレナリン
恐怖や驚き、興奮などを感じさせる神経伝達物質です。精神的・身体的ストレスを感じた時に放出され、交感神経を活性化させます。交感神経は体を活動的にする神経で、血圧や脈拍を上昇させます。そのため、ノルアドレナリンのはたらきのバランスが崩れると、神経症やパニック障害・うつ病などを引き起こすと考えられています。
神経伝達物質と薬剤
睡眠薬
ベンゾジアゼピン系
GABAに類似した構造でかつ、脳血管関門を通過できるためGABA受容体に結合することでGABAを補う。
抗うつ薬
SSRI
シナプスにおいて選択的にセロトニン再取込の阻害を行い、結果的にセロトニン量を増やす。
SNRI
セロトニンとノルアドレナリン再取込阻害薬
抗精神病薬
ドパミンの働きを阻害する。
かつては精神病=分裂病であったから命名された。
精神病各論
うつ病(気分の障害)
大脳辺縁系でのセロトニン不足が原因と考えられている。
不安は、脳幹にある青斑核でのGABA活性不足が関係している。
初めに起こりやすい不安にはベンゾジアゼピン系が速攻に効く。
そしてSSRIで徐々にセロトニンが満たされて約1か月後に効果が表れる。
パニック障害(不安障害)
脳幹にある青斑核の誤作動でノルアドレナリンが放出し、パニックになる。
それが起こることを恐れてパニック不安になる。
やがて脳内のセロトニンも枯渇してくる。
治療は不安に対してはベンゾジアゼピン系、そしてSSRI。
PTSD(不安障害)
治療は不安に対してはベンゾジアゼピン系、そしてSSRI。そしてグループ療法や行動療法。
依存症
依存性物質はシナプス伝達に影響を与える特異的な標的たとえばGABA受容体、ニコチン性アセチルコリン受容体、アデノシン受容体などに作用する。
これらの作用が次の標的分子へ作用するといった連鎖の結果、最終的に快情動(報酬効果)を発現させる。
依存性薬物が共通に作用する部位として腹側被蓋野のドーパミン神経細胞から辺縁系、特に側坐核に投射する神経回路がある。 快情動を伴う体験をするときに、中脳の腹側被蓋野から前脳の側坐核へむかってのびているドーパミン神経細胞がドーパミンを放出し、ドーパミンを受け取った側坐核のニューロンで反応が起きることによって快情動が生じる。
依存症では、その快情動の再体験を求めて依存性物質の使用と快情動の体験が繰り返されることで、依存性物質の使用が強化される。
統合失調症
中脳辺縁系でのドパミン過剰により妄想や幻覚が引き起こされている。
好きになる精神医学 越野好文ら著 講談社
抗うつ薬について
開発された年代順に、古いものから「三環系→四環系→SSRI→SNRI→NaSSA」となります。新しく開発された薬ほど、脳内のターゲットにより選択的に作用するので、治療効果が高く、副作用が少なくなります。しかし、必ずしも新しければ新しいほど良いというわけでもありません。昔からある三環系、四環系に属する薬は新しい薬と比べて値段が安く、経済的な負担が少なく済みます。
三環系
アモキサピン(アモキサン)
ノルトリプチリン(ノリトレン)
アミトリプチリン(トリプタノール)
トリミプラミン(スルモンチール)
イミプラミン(イミドール、トフラニール)
クロミプラミン(アナフラニール)
ドスレピン(プロチアデン)
ロフェプラミン(アンプリット)
四環系
マプロチリン(ルジオミール)
セチプチリン(テシプール)
ミアンセリン(テトラミド)
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors: SSRI)
フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)
パロキセチン(パキシル)
セルトラリン(ジェイゾロフト)
エスシタロプラム(レクサプロ)
セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(Serotonin Noradrenalin Reuptake Inhibitor: SNRI)
ミルナシプラン(トレドミン)
デュロキセチン(サインバルタ)
ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant: NaSSA)
ミルタザピン(リフレックス、レメロン)
うつ病の治療目標は、症状の軽減のみならず、QOLの回復である。
1剤で開始して、2週ごとに増量して、4-8週間漸増して改善なければ他剤に変更
ジェイゾロフト
4種以上の肝代謝(CYP)のため薬物相互作用が少ない。下痢に注意。
レクサプロ
QT延長のある患者には禁忌。副作用は悪心、傾眠、頭痛、口渇、めまい、下痢。半錠(5㎎)から増量して軽減可能で、10㎎でも効果期待できる。
サインバルタ
肝代謝だが尿中に排泄されるため、腎機能障害には注意。
レメロン、リフレックス
肝代謝酵素の影響少なく、最も有効であり副作用も少ない。食欲更新、体重増加がある。稀に顆粒球減少症あり。